第23章 【空色】自立神経失調症
焔の様な意を違えず受け取った少年は
己を突き刺す赤い矢に背を向けた。
紅白の髪を揺らし
色味の違う双眸を二色の前髪に隠す。
そうしてやりたくても自分には出来ない
本人がそれを望んでいない。
今ばかりは爆豪を羨ましいと思う。
癪なことにありがたいとすら思う。
自分が側に付いててやれないのなら
誰か側に居てやってくれ
そう思ったからだ。
それがよりによって爆豪だと言う所がまた
気に入らないのだがそうも言ってられない。
ハイリの違和感に気付ける人間など
そう居ない、居ただけありがたい
顔の表皮に薄い笑みを貼り付けて
轟は爆豪へと視線を投げた。
「ンな面してんじゃねぇ
そもそも、てめェの所為じゃねぇだろうがッ。」
傍目には気付かれない程のハイリの違和感
あの男も気付いているんだろう。
(よく見てやがる。)
宣戦布告は伊達じゃない
ただ怒鳴り散らし絡んでるだけじゃない。
俯いた頭を爆豪の手が軽快に叩く
叩かれたハイリが口を尖らせて文句を垂れる。
「痛いな!
そんな面ってどんな面よ!」
あの距離感だからできることだ
自分は今あそこにいるべきじゃない。
本人が望んでないのだからしょうがない。
いつもなら無理にでも構いに行く自分が押し留まっているのは、余裕からではない。
あの男と同じように
もしかしたらそれ以上に気付いてしまったからだ。
理解した上での事
それでも、少し気を緩めただけで側に行ってしまいそうだ。
「ハイリちゃん、大変だったね。」
「お久しぶりです、塚内さん。」
刑事とあいさつを交わすハイリを尻目に
振り払われたばかりの右手を握りしめる。
感情を押さえつけている今の自身では
警察にも知り合いが居るのか…
などという自然な考えも頭に浮かんでこない。
「出来るもんならしてやりてぇよ…。」
少年は誰にも覚られないように
今の心内を吐き捨てた。
そうでもしないと抑えていられなかった。