第4章 【桜色】毒占欲 陽性
~Sideハイリ~
勢いで押しつけてしまったけど
無事本人に渡っただろうか……?
一日の授業がもうすぐ終わるこの時間になっても
その行方が気になって授業になかなか集中できなかった。
『A組の上鳴電気』
そう名乗った金髪メッシュの男子生徒は、二つ返事で受け取ってくれたものの、
そのあとの物凄い質問攻めは、ネクタイのことなど忘れてしまったかの様だった。
帰りに少し覗いてみようか?
でもあの爆豪って人に会うのは…きっと変に目立つ。
元々ヒーロー科とはあまり関わりを持たない。
その信念のもと受験したわけだし
いくら轟くんと言えど、学校で接触を持つのは極力避けた方が良い。
一日悩ませていた問題は終了のチャイムと共に整理がついた。
あとは放課後をそれなりに楽しんで、帰るだけだ。
ホームルームを終える頃には随分と心が軽くなっていた。
「ね、オールマイトもう見た?」
「午後イチにさ、『わーたーしーがー!!』って聞こえたよねっ。」
「え!? 私聞こえてないよ?」
「ハイリはずぅぅぅっとボーっとしてたからねー…」
やはり話題は今年から雄英に就任された
No1ヒーロー オールマイト
話によればヒーロー基礎学を担当されているとの事。
それだけでもヒーロー科は羨みと妬みの対象だ。
悲しいかな普通科にはそういう人も少なくなかった。
「そりゃ実力で劣っていた訳だしさ、
落ちてもしょうがないんだろうけど
やっぱいいな~って思うよね~っ。」
どうやら、うちのグループにもいたようだ。
胸がツキンと痛む。
まさかそのヒーロー科を蹴りました
なんてバレたらヒーロー科の比じゃない。
よく考えて結論を出したつもりだったのに、逆に首を絞めている気さえする。
勝手な居心地の悪さから
そそくさと帰りの支度を整える事にした。
「ごめん、そろそろ帰らなきゃ。
引っ越しの片付けがまだ済んでなくて…。」
「えー? もうちょい放課後トークを満喫しようよ!」
「まだ終わってないってどんだけよっ!」
「そんなこと言わないの! おつかれハイリちゃん!」
細やかなブーイングに手を合わせながら立ち上がる。
何気に女子高生な自分にくすぐったさを感じながら、廊下へと続く扉に手を掛けた。
「あーい、おつかれっ!!」