第23章 【空色】自立神経失調症
~Sideハイリ~
大丈夫か…とは、
私の制服についている
赤黒い染みの事を言っているんだろうか。
問う言葉の割に、焦凍は冷静だった。
軽く笑って窺うように首を傾げて見せてくる
顔を近付けて来たのは私が診察しやすい様にだろう。
(参ったな…。)
小さく首を振って肩をすくめて見せる。
動揺を、悟られてしまってる
この人にならバレてもおかしくはない。
些細な仕草でわかる
私達はそういう関係だ。
私がわかるように
彼もわかってしまうんだろう。
そこまで思っても
この状況でどう説明したら良いのかわからなくて
髪を撫でようと伸びて来てた手を
咄嗟に払いのけた。
パシっと鳴った乾いた音が
その場の時を飲み込んで静かに落ちる。
誰もが、固まってしまった。
私達二人以外。
「ぁ…ご、めん…。」
「いや、別に痛くもねぇ。」
はっきり過ぎる拒絶に返されたのは静かな静かな態度。
一人焦る
自分のとった行動に
傷むその手に
震える声で絞り出した虚勢は
全く、その役目を果たしていなかった。
「これは、私のじゃないよ。」
どんな顔を返しているのか
自分でもわからない。
数秒見つめ合って
彼に怪我がない事にただ安堵した。
焦凍がそう簡単にやられるとは思ってなかったけど
さっきの消太くんを見てしまったら
そんな強がりは、風の前の塵に等しかったから。
焦凍はそれ以上何も問わず
払いのけられた手を何事も無かったように降ろし
「そうか」と呟いてゲートの方へと向かっていく。
心配した上での行動だっただろうに
悪い事をしてしまった
なのに焦凍は
何もかも察したように背を向けた。
(ありがとう。)
私に抱きついている三奈ちゃんも
手首を握ったままの爆豪くんも
未だ固まったまま焦凍の背を見送っている。
何か問いたげな目がこちらを向いたけど
苦笑いを返すことしか出来なかった。
だって
「さて、と。」
今、私がする事は
そんなことじゃない筈だから。