第23章 【空色】自立神経失調症
~Sideハイリ~
てくてく歩くなら、なかなかの散歩道
そんなことをしていたら授業なんて終わってしまうかもしれない。
(皮肉を言われる事だけは避けたい。)
とっくに手遅れだ
その結論を無理矢理頭の中から除外してひた走る
目的地までは約3キロだ。
(突っ切るか。)
目的地の名は「ウソの災害や事故ルーム」略してUSJ。
スペースヒーロー13号ご自慢の演習場だ。
しばらく走れば見えて来るあの大きなドームの中には
水難・火災・暴風大雨・倒壊・土砂・山岳とありとあらゆる災害ゾーンが詰め込まれている。
一度行ってみたいとは思っていたんだ。
戦闘型の“個性”じゃない私は
あの施設に足を踏み入れた事が無い。
それはさながら、
テーマパークにでも行くかのような気分で
駆ける足も軽く地を蹴っていた。
その光景を目にするまでは。
それは、コミックの1シーンのように
轟音響かせ突き破られた半円状のガラス天井。
鉄砲玉のごとく飛び出していったのは
人とは形容し難い大きな大きな影。
見たくない物程、目で追うものだ
しかもこんな時に限って私の動体視力が発動する。
その影の頭部は脳が剥き出しに
あるのかどうかわからない、耳まで裂けた口からは
牙でしかない歯が覗いている。
何処を見ているのかわからない
意志のない目と一瞬目が合ったような気がした。
「何…あれ…。」
足は意識せずとも速度を落とし
踵を浮かせたまま止まった。
異形型?
それにしたって悍ましい。
警笛が肌を粟立てる。
粟立った肌が背を震わせた。
大して感じた事もない第六感が
あれは危険だと告げているみたいだ。
一体何者なのか
気になるけど今はそこじゃない。
何故あんなものが
あの演習場の屋根から飛び出していったのか。
(何が起こってるの…?)
再び足りだす
今度は地を敵のように蹴りつけながら。
駆け込んだ訓練場
扉があったであろう場所にソレは無く
その向こう側にいる面々は
見覚えのある後ろ姿ばかり
只ならぬ空気はすぐに把握できた。
何故ならその元凶を一心に見入る人たちの中に
血の赤に塗れた黒があったからだ。