第23章 【空色】自立神経失調症
この日の違和感に何人の生徒が気付いただろうか
非日常の様で日常
目の前のソレに浮かされて
違和感があったとしても
それを感覚としてとらえることが出来なかったのだろう…。
その日の一限目、現国の授業は自習だった。
先日の中間テストの反動も相まって
クラス内も自然と浮足立っている。
しかもヒーロー科にとっての自習は勉強じゃない
“個性”談義という名のおしゃべりだ。
席を立つ人が出て来た頃に声は響く
「皆静かにっ静粛に!!!!」
「オメェが一番ウルセェよ。」
委員長の声に野次が飛ぶ
どう考えたって飯田の言っている事の方が正しいのに
教師であるセメントスは静かに笑ってこう言った。
「構いませんよ“個性”談義、良いですよね。」
教師が黙認してくれているのだ
席を立たずしてなんとする。
迷いなく席を立つ
各々が、話し相手を求めて
相談相手を求めて
ガタガタとザワザワと
その音は単位を上げていく。
当然ハイリも席を離れた。
この時間、彼女にとって有意義な活用法と言ったらこれしかないのだろう。
「緑谷くん、この前のケガ…診せて貰っていいかな?」
「あ……ハィ。」
クラスの中で一番診ている回数が多いと言っても過言でない患者。
未だに慣れて貰えないのか返事は尻すぼみ
目を合わせるまでにも、異常に時間がかかる。
キョロキョロ逃げ回る大きな緑谷の目に苦笑しながら
ハイリは静かに辺りを見渡した。
目くばせが数件飛んでくる。
「次よろしく」と。
口を閉じたまま弧を描き
静かに首を縦に振る。
この自習の時間
フルに使って5人、診ることが出来るだろうか?
自分の体力と昨夜の睡眠時間
頭の中で量りながら、緑谷の頬に手を添えた。