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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第23章 【空色】自立神経失調症




その日の始まりは
至極普通に紡がれた。

ただ一人の少女の日常を除いて





「貸せ」

「え?」

「良いから貸せ」






HR前だと言うのに
挨拶もせずに第一声がこれ

担任かっこ兄同然の男を見上げ
少女が取る行動は


とりあえず首を傾げる


この一手のみ。


まず「何を」だと問いたい。
突然目の前に立ち
節くれだった右手を差し出され
「貸せ。」の一言で察しろと言う方が
俄然無理な話だ。


(大体想像はつくけど……。)


それでも察してしまう所が
付き合いの長さと言うべきか…

だけど察することは出来てもハイリは納得出来なかった。
そんなことをしたら自分がどうなるか
それこそこの男が一番理解しているだろうに…

だが男は机越しに一歩詰め寄った。


「メガネだ、寄こせ。」

「わかるけど…なんで?」

「いいから寄こせ。」


なかなか寄こす気配がない妹にしびれを切らしたのか
いつもの合理性に欠いたのか
セットしたばかりの前髪を乱しながら
少女の愛用のメガネは奪い取られた。

その荒さに我慢し兼ねた少女は
その男が担任だと言う事も忘れて声を上げる。


「ちょっと!
いつも掛けておけってそれをくれたのは
消太くんでしょ!?」

「あの時はあの時だ
いい加減無くても眠りこけないようになれ。」


理不尽な事この上ない

それでもハイリが反論しなかったのは
そう言った目に見覚えがあったから。

そこにいつもの気だるげな眼差しは無く
あるのは敵でも見つけたかのような鋭いもの。


(だから消太くんは苦手だ…。)


有無を言わさぬその瞳に
少女はただ俯いた。



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