第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
「ありがとう。」
綻んだ口元でわかる。
クイズの答えは「ありがとう」
当たり前すぎて中々言わない。
誰もが知ってるのに身近な人ほど
見失いがちになってしまう、大切な言葉。
返事は特に無く
代わりに赤い舌が口の横を辿る。
「ついてた。」
「うそっ!」
「下手だなオマエ。
どうやったら付くんだ?」
舐め取られてもまだ尚付いていたのか
指で更に拭われたチョコレートを口に運びながら
得意気に悪戯に笑う。
今日はどこまでも子供の様だ。
「焦凍も飲んでみればいい。絶対つくから!」
なのに
突然こんな顔をするから困る。
「いや、俺はこっちで良い。」
スッと近付いた悪戯な瞳
今度はとても色っぽくて
カッと首周りから熱が上がっていく。
顎を掴まれて首は更に後ろを向いた
可動域ギリギリといったところだろう
たぶん少しくらいは痛いハズ。
でもそのキスはあまりに甘くて
口の中にあったチョコレート全部を持って行かれてしまったのに、まだ甘くて
痛い、なんて思っていられなかった。
僅かに離れた唇から漏れた息は甘い香り
愛おしむ視線に肌を撫でられる
「そういやチョコ貰い損ねたんだったな。」
「……ごめん。」
謝ったけど
何を言いたいのかくらいわかってる。
無理矢理カップに口を付けながら
次の言葉に期待してしまう。
「良い、もう一口貰う。」
ほら、ね?
三口目は殆ど焦凍に食べられてしまった
きっと四口目は明日の朝になってしまうんだろう。