第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
初めてのバレンタイン
貰ったチョコも
渡せたチョコも
その量はあまりに少なかったけど
その分甘い、とびきりとろけたチョコレート。
珍しいと思ったけど
これ程バレンタインに向いているチョコレートってないんじゃないかな?
「すげ、ハイリの中トロケすぎだ…。」
「っん、焦凍が…熱いから、だよ…っ?」、
蕩けるほどに熱く
お互いの境界線なんて無いほどに甘く絡まっていく…。
バレンタインの夜は
まさにホットチョコレート
「もう、他の奴からは貰わねぇ。」
「良いから…私のも貰って…ね?」
「は…っ、そこは素直に頷いとけ…ッ。」
お砂糖より甘い
蜂蜜よりも滑らかで
水あめよりとろけてる
これで愛の告白があれば
完璧だと思うんだ。
「好きだ…ハイリだけだ。」
「ん、私も、大好きっ。」
ギシギシと鳴き声をあげるマットレスの音を聞きながら
細めた視界の端に
テーブルに置かれたマグカップがチラと映った。
更に視界は細まって
薄らぼやけた世界で微笑む。
本当に、私は幸せ者だ。
今朝大声で焦凍を罵倒した
その日の夜をこんな形で迎えるなんて誰が想像できる?
これも皆のお陰なんだろう
今日渡し損ねてしまった友チョコは
明日、お礼を添えてわたさなきゃ。
だけど一つ
悩みごとも出来てしまったのもまた事実。
こんなバレンタインを迎えてしまって
今年のホワイトデーにお返しをするのは
私なのか焦凍なのか…?
バレンタインデーを知らなかったくらいだ。
きっと焦凍はホワイトデーなんて知らないだろうから
言わなきゃ済む話なんだけど
それは流石に駄目…だよね?
(いっか、まだ一月もある訳だし…)
幸せ過ぎる悩みは弾く胸の中へ。
今はまだ
このチョコレートのような夜を抱き締めて――…
ちょこれぃとホリック たぶんつづく…?