第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
「私も好きだよ?」
「そうじゃねぇ。」
「んー…どしたの?」
「好きだ。」
好きだと言ってくれたから
私も好きだと言ったのに違うと返ってくる。
これは困った。
何が正解なのだろう?
捻った頭が音も無く肩に乗ってる頭と触れあった。
じゃれるようにぐりぐりと押し付けども、笑ってるだけで答えは貰えそうにない。
大体こういうなぞなぞのようなものを出すのは
いつも私の方なんだ。
出される側に回った途端
返答に困ってしまう。
結局は
「降参です、教えてくださーい。」
両手と同時に白旗を上げる。
本当に旗でも持ってるものなら一緒に上げるのに。
左右重さの違う肩をすくめて
指がかすめた髪を撫でると
すり寄られる度にくすぐっていた髪が鎖骨を撫でて
耳に触れた。
「バレンタインだ。」
頬に落ちてきたキスは大して強くも無かったのに
反動を受けた様に頭は左に傾いた。
とっくに終わったと
勝手に思っていたバレンタイン
今日という幕は
まだ閉じてなかったのだ。
なんと言っても相手はあの轟焦凍なのだから。
彼はどこまでも
私の予想の遥か上を行く。
今回に至っては
予想すらしてなかったもん。
そうだ、私は確かに言った。
『バレンタインと言えば?
好きな人にチョコレートをあげて愛を告白する日でしょう?』
当たり前すぎて省いちゃったけど
この言葉には決定的に足りないものがある。
主語だ。
「女の子」という主語。
この言葉だけでバレンタインを理解した焦凍は律義にも
私にチョコを用意してくれたのだ。
堪らずぷっと吹きだした。
「不味かったか?」
「んーん、ただホットチョコなんてどうやって知ったの?
珍しいと思う、かなり。」
「クラスの女子に相談した。」
「え!?」
焦凍が相談!?
しかもジョシに!?
目は皿のように
今なら前菜くらいは盛り付け可能なんじゃなかろうか。
間近で目を合った瞳が
そろりと横へ逸れる。
その出来事は
今日の放課後の事らしい。