第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
「悪かった…。」
何度目かのお詫びは
額を触れ合わせたまま
吐息が触れてくすぐったかった。
お互い笑う所じゃない
だけどこんな事繰り返してると
どんどん可笑しくなってくる
私もだけど
焦凍も笑いを堪えてるって事はわかる。
「だからね…謝るのは私の方なんだよ?」
「いや、俺だろ?」
「私だよ、勢いでチョコ全部食べちゃった。」
「そもそも俺の所為だろ。
知ってたら、他のチョコなんざ貰ってねぇ…。」
深いため息と共に
触れ合う面積が増えていく。
どちらも決して譲らない
そんなお詫びのラリーが延々と続く。
終わらせるにはこれしかない。
これだけ触れ合っていてキスの一つも無いのだ。
欲しくなってしまうのは当然
これくらいは、ねだっても良いんじゃないかなと思う。
思いついたのはちょっとした悪戯心だ。
「じゃぁね、もっと甘いのが欲しい。」
何言ったって焦凍は絶対譲らない。
ならば何かを強請って納得してもらった方が早い。
色々言い訳を組み立てて
ただ欲しい、その一言を言えない自分を正当化する。
不思議そうに首を傾げたその唇をトントンと指でつつき
ニッと笑う。
暫く思案していた顔が理解したように一つ笑い
つられたように、口端を上げた。
「我慢するつもりだったんだが…?」
「じゃあ許しません。」
「お前、たまに妙に大人になるよな。」
「これ…大人っていうのかな?」
笑う音はひそやかに
時計の針が歩を進める音の方が大きかったかもしれない。
大きな手が髪をかき上げて耳へと
伝う指は輪郭をなぞって
お互いのお詫びの言葉を食べ合うように
会話は口内に呑まれた。