第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
心底不思議そうな一言と瞳に
私の中で何かが弾けた。
自分より下にあるその綺麗な顔に鼻が触れそうな程顔を近付け、目一杯睨む。
大きく息を吸いこんで、一気にまくし立てた。
「あのねぇ…バレンタインと言えば?
好きな人にチョコレートをあげて愛を告白する日でしょう?
そんな日にチョコを突っ返されて?
目の前で他の子のチョコを受け取る。
そんな彼を目の当たりにして、怒らない女の子がいると思う!?」
どうせなら、何故突き返されたのかその理由を聞き出してやろう。
ここに来て私は、腹を括った。
が
突如変わった焦凍の表情に…
その気持ちは難無く砕け散った。
「え、焦凍?
どうしたの?」
「待て、処理できねぇ。」
一点を見つめたまま頭に手を添え
ヨロリとソファーに片手をつく。
これは本当に具合が悪そうだ。
「え…大丈夫!?
ちょっと―――……」
咄嗟に肩に手を添えると
頭を押さえていた手に身を捕らわれた。
「……焦凍?」
まるで母にしがみついて離れない
子供の様だと思った。
回された腕は背を横断して反対側の肩まで抱いている。
片腕なのに逃れられそうにない。
どう考えたって抱きしめられてるのに
そう思ってしまったのは
「悪い…。」
囁かれた一言にあった。
そろりと見たその表情は
らしくもない、捨てられた猫の様。
黒曜と翡翠二色の双眼が不安気に揺れる。
ここに来て初めて本気で謝られている
その実感にふと浮かんだのは
まさかの可能性だった。