第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
振り返る前に声でわかる
頭で考えるより先に
胸がホッと息をついた。
今更、何の用なのだろう?
頭の中で皮肉を零してるのに
焦凍がここまで来てくれた事が嬉しいのだ。
私って単純だなって力いっぱい思う。
(全部…食べちゃったんだけどな。)
どうしよう、なんて罪悪感に駆られ始めてる自分を
殴ってやりたい。
焦ってるのか安心してるのか喜んでるのか
脳内が忙しく稼働してる分
動きは緩慢、口はピクリとも動かなかった。
ドアを開けたその人は
私の名を呼んだ割に、
ここに居ると言う確証はなかったのだろう
一度驚いたかのように目を見開いて
安堵したように息をついた。
「ハイリ…。」
隣に――ソファーに腰かければいいのに
サイドに膝まづく様なんてまるで王子様みたい。
長い指が伸びて来る
髪を梳いて頬まで滑り落ちて来る。
私の存在を確認するかのような所作は
もう癖になってしまってるみたいだ。
髪に差し込まれる指の順番も
滑り落ちていく手の速度も
身体が覚えてしまっている。
だから
私もこれをされると、肩の力が抜けちゃうんだ。
情けない話
ずいぶんとチョロい女だと自分でも思う。
「悪かった。」
「ん、もういいよ。」
パンデビスは食べちゃったし
別にバレンタインを逃したら
二度と愛を告白出来なくなる訳でもない。
こんなに息を切らして探しに来て来てくれただけで
充分だと思った。
思ったのに……。
「じゃあ、なんで怒ってたんだ?」
どこまでも
地雷を踏みたいのかこの男は!!!