第22章 ♦番外編♦ ちょこれぃとホリック
最近の仮眠室は設備が行き届いている。
なんか年寄りみたいな台詞だけど
子供の頃から通ってるんだ。
この仮眠室がどれくらい居心地の良い場所に変わったのか
その辺の中堅職員より説明出来るだろう。
(なんて事はどうでも良いのよ。)
まずはポットのお湯を急須に注ぎ
呑みたくもないお茶を淹れよう。
本当なら紅茶かコーヒーが欲しいところ
でも買いに行く気力なんて今の私には無い。
お茶を淹れたのは他でもない。
この、渡し損ねたお菓子を処分するためだ。
お茶の葉を蒸らしている間に
隣に置いた小箱のリボンに指を掛ける。
木目柄の箱から金糸で編まれたリボンがスルリとほどけて
まるで衣服でも解かれているみたいだ。
なんて乙女チックな妄想は振り払おう。
どこまでも夢を見たいのか私は。
全ての煩悩を振り払うべく
頭が取れんばかりに首を振る。
食べやすいようにと切っておいた一切れを口に運び
頬をほころばせた。
「ん、美味し。」
食べ物に、罪は無いのだ。
朝、ランチラッシュに無理言って一緒に作ったショコラパンデピスは一人で食べるにはちょっと大きいパウンド型。
私も食べたかったのだ。
一緒に食べる気だったのだ。
「こんな事なら、型抜きしてもっと可愛いのを作ればよかったなー。」
その方がアイシングクッキーみたくデコレーション出来た。
きっと作るのも食べるのも楽しさ倍増だった。
考えたくもない恨み辛みは
チョコレート色の焼き菓子と一緒にお茶で流し込もう。
朝食はちゃんと食べた。
なのにお菓子は全部入るのか
まったく、甘い物は別腹とはよく言ったものだ。
頭の中に並ぶ言葉は
二人が別々に独り言ちってるみたいにバラバラだ。
最期の一切れを頬張りながら苦笑する。
刹那
そんな私の脳内を一掃するかのように
仮眠室のドアは無遠慮に開かれた。
「ハイリ…っ。」