第21章 【琥珀色】インプリンティング
~Side轟~
ハイリは見た目だけで言えば
綺麗に属するタイプの女だと思う。
身体の線は細ぇし
肌の色だけじゃねぇ
髪も目も水彩画の中から出て来た人形みてぇだ
日の光に溶けちまいそうに淡い。
だが、それでもコイツに俺が使う形容詞は
やはりこれなんだろう。
(可愛い…。)
くるくる忙しなく変わる表情は
見ていて飽きねぇ。
「ハイリ。」
「ん?」
数歩前を行くハイリの腕を掴んで引き寄せる
反射的に振り向いた顎を掴んで――
「………っ!」
お望み通りにってやつだ
笑って見せると
俺の意を理解したのか
開いた口は何も言葉を零さぬまま
ぎゅっと閉じられた。
昨夜の事を経て、1つ気付いた事がある。
俺はハイリが居るから正気を保ってんじゃねぇかと。
その分、コイツを失いそうになると
自制が訊かなくなる。
もし失うなんて日が来たらきっと
その時俺は壊れちまうんだろう。
だから、ハイリには安心してて貰わねぇと俺が困る。
「伝わったか?」
「………ぅん。」
嬉しそうに頬を染めるその表情に
誰よりも俺がホッとする。
こんなんで伝わんなら
毎日毎時間だって伝えよう。
小さな約束を重ねて行こう。
それでお前が安心してくれるなら。
「怒ンねぇのか?」
「ん…今日は、ね。」
初夏の風は温かく、それでいて軽い。
熱された空気がその体積を増していくように
胸を焦がせば焦がす程
気持ちもでかくなっていくんだろう…。
照れくさそうに笑うハイリを見て
ふとそんなことを考えた。