第21章 【琥珀色】インプリンティング
~Side轟~
参った…
自分の知識の浅さに呆れるほどに
「お前に対する感情を
なんて言い表したら良いのかわかんねぇ…。」
知ってる言葉は無い訳じゃねぇ
だがどれを並べても違う
やたらと陳腐なモンに思えてしょうがねぇ。
深いため息を付き
茹だる頭を細い肩口に埋めると
伝わってくるのは小さな振動。
笑ってやがる…
わかっても、それにツッコんでやる余裕はなかった。
なんせ今まで
思ったことは全部言ってきたってのに
言いたくとも言葉が出ねぇんだ
ハイリは言わなきゃわかんねぇヤツだから
俺にしてみりゃかなりデカい問題。
しかも誰のせいでもねぇ
強いて言うなら自業自得だ。
小さく揺れる肩はそのままに
こっちの気も知らねぇで返ってきたのは
ひどくカラリとした声だった。
「なぁんだ…簡単だよ?」
直に伝わる振動が大きさを増す。
僅かに身体を離されて
亜麻色の瞳が下から覗き込む。
茶化す様な言葉の割に
その表情は優しかった。
「言葉じゃなくてキスが良い。
だって──」
重なった唇は
瞬く間に離れていった。
「――キスは愛を誓う行為でしょ?」
大きな目をきょろんと上げて
悪戯が成功した子供のように笑う。
「結婚式で!」と一言付け足して
勢いを付けてくるりと背を向ける
らしくない大きな挙動は
大方、真っ赤になってるからだろう。