第21章 【琥珀色】インプリンティング
~Side轟~
――――……
「お世話になりました。」
「こちらこそ、無理に引き留めてごめんなさいね。
よかったらまた遊びに来てね。」
「はいっ。」
翌日、親父と顔を合わせたくねぇ
それだけの理由で早めに帰る事にした。
姉さんはハイリとの別れを惜しんでいたが
昨日の今日だ
強く引き止められる事も無く、家を後にする。
ハイリはハイリで
姉さん以上に
別れ難そうな顔をしていた。
「ね、エンデヴァーさんに挨拶しなくて良かったの…?」
「要らねぇだろ?
まず世話になってねぇ。」
「それは言い過ぎだよ…。」
心残りを隠しもせず、家の方を何度も振り返っては
見送る姉さんに手を振り返す。
事が起こったのは角を曲がった時だ
何の前触れも無く、その細い腕がするりと絡められた。
「珍しいな…。」
言って気付いた。
珍しいじゃねぇ、初めてだ。
コイツが人前で自分から触れてくるなんて
まずねぇモンだから
思わず足を止めて
俯き気味の頭をまじまじと見おろした。
「ハイリ…?」
絡められた手が
ぎゅっとシャツを握りしめると同時に
逸らされた大きな瞳。
覗きこもうとした途端、指が頬に伸びて来た。
「あんまり見ないの!」
フニと頬を押し返され視界は再び正面へ。
なんで見んのが駄目なのかイマイチわからねぇが
恥ずかしいんだろう。
横目で見たハイリの耳はゆでだこ以上に赤に染まっていた。
(コイツの照れる基準がわからねぇ…。)
ただ、あまりの可愛さに口元が緩む。
隠すように手で覆えば
居た堪れない赤面が俺を見上げていた。
「どうした?」
「腕、組んでみたかった…の、ですよ。」
たまに思う。
ハイリは自分を押し込めすぎて
本人すらその在処がわかってねぇんじゃねぇか、と。
だから
こういう甘えを出す時が一番
心臓に……悪い。