• テキストサイズ

【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第21章 【琥珀色】インプリンティング


~Side轟~


濃紺の空に掛かる丸い光は
部屋の中で見たものよりも柔らかく
その色さえ暖色を増したように見える。


嫌いだった…


今にも消え入りそうな声で話していたかと思いきや
ひょっこり上げたハイリの表情は
その月の光を写し取ったかのような柔らかなもの。

夜風が月と同じ色の髪をふわりと浮かす
一緒に、抱えていた不安が流される様な心地だった。


(コイツは…ったく。)


ついて行けねぇ
子供の様にコロコロ表情を変えては
翻弄してくれるヤツだ。

しかも…
無理に笑っているように見えねぇからタチが悪い。


「お前な、もし無理してんなら――…」

「無理じゃないって!」


言葉を被せられると同時に
ペチと音が鳴って、痛みとは程遠い
小さな刺激が頬に走る。

両頬を掴まれて
弧を描いた口元はそのままに
真っ直ぐな視線に捕らわれた。


「無理じゃない、聞いて欲しい。」


何も言わなかったんじゃねぇ
言えなかった。

あまりに真っ直ぐで
その真剣な瞳に
一瞬、面食らっちまった。

「ん?」と傾げた首は
俺の返事を待ってるんだろう。

返事の代わりに呆れた笑みを一つ
受け取ったハイリは安心したように丸い目を細め
そして、緩やかに頬を上げた。


「さっきのお話…ね?
彼女は赤ちゃんとお別れしたって
流産の事だと思うんだ。
人が生まれるって実は奇跡的確率なんだよねっ。」


何が言いてぇのか

相変わらずクイズみてぇな物言いをするやつだと
小さく笑うと
ハイリは俺の心を見透かしたかのように
その笑みを得意気なものに変える。

嬉しそうにはにかむ辺り
答えが出てくるのは
どうやらまだ先みてぇだ。

俺は答えを推測する訳でもなく
口を挟むわけでもなく
ただ次の口が開くのを
どこか楽しみながら待っていた。


「その上こーんなハイスペックのチート人間が産まれるなんて、どんだけの奇跡よって話だよ。」



/ 804ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp