第21章 【琥珀色】インプリンティング
~Side轟~
【彼女は泣きながら訳を訊きました。
「どうして?」
すると彼は言ったのです。
「個性婚をする事にした。」
二人ともヒーローでした。
だけど二人の“個性”の相性がいいとは言えませんでした。
だからといって、納得できるものでもありません。
彼女は何度も問いました。
「どうして個性婚を…?」
しかしちっとも彼は答えてくれません。
何度も何度も訊ねて
問う事に疲れてしまった彼女は
とうとう別れを決意するのです。
そして二人は
別々の道を歩むことになりました。
だけどそれで終わってはくれませんでした
なんと彼女のお腹の中には彼の赤ちゃんが居たのです。
彼女は悩みました。
そして産むことを決意しました。
だけど彼女の周りの人は「やめなさい」と
彼女を怒るのです。
彼女は一人で頑張ることにしました
頑張って…頑張りすぎて
お腹の中の赤ちゃんとお別れしてしまうのです。】
そこで…
プツリと物語は切れた。
「これね、父が家にいる時は必ず寝る前に聞かせてくれてたの。」
「小さい子に聞かせる話じゃないよね」と苦笑しながら、話はいつもここで終わるのだと言う。
多分、そこで寝てしまうのだと。
長い睫毛が下を向いて
ただでさえ上がりきっていなかった口角が
また下がる。
月明かりに縁どられたその横顔が
今にも泣き出してしまいそうで
我慢できず手を伸ばし、腕の中に閉じ込めた。