第21章 【琥珀色】インプリンティング
~Side轟~
障子を開け放った部屋は
満月の為か電気がなくとも煌々と
絶景だからと
強請られ、誘われ
縁側に腰かけた途端の第一声がコレだ。
「お団子があったら尚良いのにねぇ。」
月を見上げ、眩しそうに目を細めて笑う
冗談めいた言葉の割に月を映す瞳は真剣だった。
見覚えのあるその瞳は
自分の事を語る時の物だ。
見入っちまうくらい綺麗で
綺麗すぎて手を伸ばしそうになる。
掴まえとかねぇとどっか行っちまう
そう思わざるを得ないような…
だが出て来た言葉は
そんな思いとは似ても似つかねぇ
なんとも陳腐なもんだった。
「お前が土産に買ってきた葛餅ならあるんじゃねぇか?」
別に団子が欲しいわけじゃねぇ
わかっていても話に乗るべきなんだろう。
これは真面目な話をする為に必要な
前置きなんだろうから
ハイリはこういう真面目な話が
心底苦手な奴だから。
ハイリは「それは駄目だよ」とクスクス笑い息をつく
話は突然に
まるで読みなれた絵本でも朗読するかのように
流暢な言葉で紡がれた。
「むかーしむかし、一人の女ヒーローがおりました。」
決して俺の方を見ず
月から目を逸らさねぇ。
その横顔に相槌も忘れて見惚れながら
ぼんやりと思う。
これが今夜の俺に対する
ハイリの答えなんだろうと。
「彼女には結婚の約束した大好きな人が居りました。
だけどそろそろって時に、突然お別れしようと言われてしまうのです。」