第20章 【琥珀色】月光欲
~Sideハイリ~
総毛立つ
雷のような刺激に
啼き叫ぶ
ただ本能のままに
羞恥とは何か
色情とは何か
理性とはモラルとは
快楽とは愛欲とは
どれもわからず
かと言って何一つ捨てられず
月夜に上がるは
ただ快楽を求めるメスの喘声
「しょ…と、やっ、だめぇっっ!」
「想像以上に良い啼き声だな…」
初めての事なのに
目を瞑っているのに
何をされているか詳細にわかる。
舌が割れ目をなぞり、突起を吸わせるたびに電流を流された様に全身が跳ねる。
逃れようと身を捩れども
腰を抱き込まれ動かす事も出来ない。
時折聞こえる笑う吐息と
粘着質な水音
間違いなく部屋を満たしているのは自分の声なのに
それが頭に響いては脳幹が痺れ
狂ってしまうようだった。
(もう、わからない…。)
熱い涙が目尻から零れ
髪を濡らしていく。
濡れた髪を振り乱し
繋がれた腕を捻りながら
自分の中を侵食していく指に舌に
初めて怖いと思った。
この行為にじゃない
焦凍の感情が見えない事にだ。
これだけの行為をしているのに
私に触れる指は泣きたくなる程優しい。
溢れる感情の洪水から
回り弾き出されたのは
「見えない感情への恐怖」だった。
ぐちゅり
音を響かせて自分が咥え込んだ指が増えた事に気づき目を開くと、嘲る笑みが見下ろしていた。
「そろそろイきてぇよな?」
濡れた唇を親指で拭いながら
大輪の花は妖艶に微笑む。
男とは思えない艶を放ち
また顔を埋めるとさっきと同じ刺激に加えて
今度は中で指がうねるように動き始めて
「――っ!!」
押し寄せる快楽の波に呑まれるまで
時間は掛からなかった。