第20章 【琥珀色】月光欲
~Sideハイリ~
「だ、め…ねぇ…焦凍っ…っ」
腕の自由を封じられ
その分、足は忙しなく動く。
今度はその足の自由をも奪うかのように
持ち上げられた右の足首にキスが落ちた。
囚われてしまったこの目では
視線を逸らす事も出来ない。
焦凍はそれをわかった上で
見せつけるように舌を這わせ始めた。
電話中から既に熱が籠っているこの身体では
それだけの刺激で腰が跳ねてしまう
その度に絡みついた帯が手首を締め付けては
理性が口を衝いて出た。
「だめだって…ばぁっ」
きっとこうなってしまった原因は
私にある。
エンデヴァーさんに告げた言葉で
傷つけてしまったんだろう。
ふと頭に過ぎったのは
いつの日か見た
放課後の暗い教室で絡ませた視線。
だけど
前髪の間から覗く愉し気な色は
その向こう側の感情を悟らせてはくれない。
喜怒哀楽
「楽」意外の感情を捨ててしまったかのような瞳に
(似てるけど違う…)
そう思った。
「本気でだめだと言ってんのか?」
「何度も…言ってる…っ!」
本当は
だめだと言いながら身体は悦んでいる。
ううん、身体だけじゃない
心だって本当は悦んでる。
焦凍は意地悪する事が多いけど
なんだかんだで私の嫌がることはしない。
だから安心して拒絶するフリが出来るんだ。
そう
思ってたのに
「……まだだな。」
確認するように覗きこんだ焦凍は
首を傾げて表情無く呟く。
読めない表情と行動に戸惑っている間に
するりと手が両膝の下に差し入れられ
見下ろす瞳はそのままに
ゆっくりと膝が持ち上げられていく
言葉は
これから何をするか、謎かけのように投げられた。
「最近…気付いた。」
「な…に?」
「嫌がるハイリを無理矢理犯すって
嫌いじゃねぇ…。」
「っ……」
言葉に詰まったその一瞬
力は込めたはずなのに、私の足は大きく開かれた。
甘い毒に侵されて
落ちた先にあった糸は
私を食さんとする蜘蛛の罠
舌なめずりをするは花か蜘蛛か
どちらにせよ
私に拒否権は――…