第3章 【桜色】恋愛性免疫不全
~Sideハイリ~
入学二日目に他クラスの扉を開けるというのは
存外勇気が要るものだ。
1-Aと書かれた大きな扉を前にして私は思い悩んでいた。
(なんて言って渡せばいいんだろう?
誰かに渡して貰うようにお願いするとか?)
いやいや、それは駄目でしょ?
母親じゃあるまいし!
家に泊めたと言っているようなものじゃない!
当たり前と言えば当たり前なんだけど
扉の前で立ち尽くしていたものだから
「お? うちのクラスの女子?
じゃねぇよな?」
いつの間にか開いていた扉の向こうに数人の男子生徒が立っていた。
(う、わ……。)
金髪メッシュに赤髪に金髪。
派手な組み合わせに目を丸くしていると
金髪の人が急に怒鳴って来た。
「邪魔だ!! どけやモブ女!!!」
……………
開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。
まさか自分がそれを体現する日が来るとは思わなかった。
モブなんて言われたのは、生まれてこの方初めて。
逆立った金髪に三白眼
加えてこの口の悪さ。
ここ…ヒーロー科だよね?
ヒーローよりヒールが似合いそうな男に
ここに来た目的も忘れて呆けてしまう。
一緒に居る2人に諫められても、彼の態度は変わることは無かった。
「ごめんね~、コイツちょっとアレなんで。」
「んだと!? 殺すぞ!! クソがッ!」
「落ち着けって爆豪。」
流石ヒーロー科、濃いキャラが揃ってる。
特にこの人、
爆豪と呼ばれた男子生徒は明らかに纏うオーラが違い過ぎて、他の二人が普通に見える位だ。
朝普通だと思ったのはやっぱり普通科だからだったんだ。
ヒーロー科を選ばなくて良かったと、ホッと胸を撫で下ろす。
「誰かに用? 呼んできてやるよ。」
向けられた人懐こい笑顔は少し軽くも感じたけれど、
赤髪の人は例の爆豪くんを抑え込んでいるし
この人にお願いするべきだろうと、握りしめていたネクタイを差し出した。
「すみません、これ…そこに落ちてたので
このクラスの人のかなって思ったんですけど…。」