第3章 【桜色】恋愛性免疫不全
~Sideハイリ~
「ハイリちゃんドンマイ!」
授業が終わると同時に声を掛けられた。
肩を叩いてくれる子もいる。
「ありがと、焦ったよ…。
授業がフツー過ぎて気ぃ抜けちゃってさ。」
「わかる! 期待よくない。」
「上手く寝る方法教えたげるよー。」
自然と集まったのはさっきと同じ顔。
繰り広げられる話題は予想通りだったけど
どうやら友だち運には恵まれたらしい。
容赦ない突っ込みを誤魔化しつつ
次の授業のテキストを準備していた。
鞄を膝の上に乗せて、次のテキストを漁る
(あれ……?)
サラと手に触れた違和感はごく最近手にしたものだった。
「んん…?」
摘まみ上げて首をひねる。
その細長い赤い布に首を捻ったのは私だけじゃなかった。
「……なんでネクタイ?」
「それ…誰の?」
「ネクタイは一人1つだしねぇ…?」
寄せられた6つの目には疑問と期待が入り混じっている。
私のネクタイはきっちり首に巻かれているし
言い逃れようもない。
これは彼女たちの期待通り、彼のものだ。
(あれ…? 朝巻いてなかったっけ?)
思い出そうにも
朝から極力見ない様にしていたのは自分なのだから
記憶に残っているはずもなく…
「ちょっと、トイレ行ってくる…。」
「「「いってら~」」」
ハンカチの代わりにタイを持って立ち上がったというのに何も聞かずに見送ってくれるなんて
やっぱり、私は友達に恵まれた。
そう思いながら教室を出た。