第20章 【琥珀色】月光欲
~Sideハイリ~
少し首を傾げただけで流れる紅白の髪は
サラサラと音楽を奏でる楽器のよう。
変わらぬ笑みには無垢ささえ見える。
布団の上で向かい合わせに座り
見つめ合うだけで心拍数が上がっていく。
頬笑み返す余裕すら私には無いのに
彼は更に難題を突き付けて来た。
「じゃ、俺が出るぞ?」
「……え?」
付き合っている事は公になっている。
だけど、一緒に住んでる事なんてクラスメイトどころか
消太くん達にも言ってない。
ましてや焦凍の家に泊まっているこの時に――?
(この人は何を――…?)
戸惑う私に
長い指は、躊躇い無くスワイプした。
途端にスマホがしゃべりだす
この場を壊しかねないその声は
爆豪くんの物だ。
『ハイリてめェ…俺のノート何処やりやがった!?』
耳に当てていなくてもはっきりと聞き取れるほどの音量
彼らしい第一声に焦凍はクスと笑う。
スマホは更に突き出され
液晶画面がヒタと頬に触れた。
(なんで……?)
傾げられたままの紅白の頭が
出ないのか?と問いを投げ続けている。
何がしたいのかわからない
でも、出るしか無いのだろう。
何を恐れる訳でもないのに
恐々と自分のスマホを手に取った。
『何とか言えや…オイ――…』
「ご…ごめん、寝ててさ。」
『あ"? ガキかお前は、つか俺のノート
何処やりやがった!?』
視界の端で動く焦凍を横目で追いながら
ノートが何を指すのか必死で考える。
「何のノート?」と問う余裕も無かった。
「え…と、明日、確信してからまた……ぁっ!」
『あって何だよ、まさかテメ…
机ン中入れっぱじゃねぇだろうな?
テメェが貸せっつったから貸してやったんだろうがよッ!』
そうだ、借りた。
英語のノートを昨日借りた。
放課後までに返すと豪語して…爆豪くんの言うとおり机の中だ…。
だけど叫んだ原因はそれじゃない。
「返事しねぇと…爆豪キレんじゃねぇか?」
後ろから腕が回されたと気付いた瞬間
スマホを当てた耳とは反対側の耳輪を舌が這う。
腰に回った両手は、薄い布越しに私の肌を這いあがり
両胸をゆたりと持ち上げた。