• テキストサイズ

【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第19章 【琥珀色】訪問診療録(後編)


~Sideハイリ~


綺麗に敷かれた布団の上に横になってページをめくる。

パラと音が鳴り
開いたページに並ぶ文字は1頁につき約700文字。
なのに10秒も経たないうちにもう一度同じ音が鳴り
次第にパラパラとカードでも切っているかのような音になっていく。

頭に入らないのだ。
電車内ではあんなに入り込んで読んでいたと言うのに…。


「あー…気もそぞろってこんな感じなのかー。」


電気を消して、布団の中に潜って
よく考えたら1人で寝るのなんて久しぶりだ。
自宅だろうが実家だろうが
焦凍の実家だろうが寂しい物は寂しい。


(ついこの間までそれが当たり前だったのにな。)


なんて、目を閉じたまま考える。

いつの間にこんなに寂しがり屋になったのだろうか
これではまるで子供だ。
うだうだと考えないように寝ようと思って目を閉じたのに
瞼の裏に焦凍が浮かんでしまっては意味が無い。

瞳を開くと
閉じていた時よりは幾分明るい部屋の、
見慣れない天井だった。

開いても閉じていても大して変わらないじゃない。

どちらにせよ視覚を失った神経は、
その分聴覚が研ぎ澄まされるものだ。
どこかに時計があるのだろう
カチコチと鳴る音がやけに耳につく。


(こういうのって
気になりだしたら止まらないんだよね。)


笑いながら寝返りをうって
さっきまで胸を占めていた靄を紛らわすように耳を澄ます。

するとどこか遠くで聞き慣れない
でも不思議と既視感を覚える音が聞こえた。


……パタン


始めは
気のせいかと思った。

だけど気のせいではないらしい
繰り返すその音は機械音にしては柔らかい
それでいて無機質な音だった。


スッ…パタン…スッ


何の音だろう?
上体を起こして耳を澄ます。

月明かりだろうか…
もう0時近いと言うのに障子の向こう側はほのかに明るい。

誰かが前を通れば影くらい映るだろう
何気なくそう思って

そこで

既視感の正体を思い出した。


/ 804ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp