第19章 【琥珀色】訪問診療録(後編)
~Sideハイリ~
テレビの中のコントか何かを見ているかのように
その会話はテンポ良く流れては去った。
顔色一つ変えず紡ぎ出されたその言葉を
聞き返したくとも巻き戻しなど叶わない。
不意に訪れた沈黙に
ポンっと出て来た疑問符は3人分。
湧いては浮かび上がり、また湧き出ずる。
そんな静けさの中
誰よりも早くその結婚発言に反応したのは
部屋へ戻った筈のエンデヴァーさんだった。
「責任で結婚か。
なんとも浅はかな考えだ。」
いつから居たのだろう
何処から聞いていたのだろう
後ろから現れたそのヒーローは
腕を組み、諭す様な表情が厳めしい。
何処からどう見ても親の顔。
突き付けられた厳しすぎる正論に
焦凍の肩が僅かに跳ねた。
空気が――…不穏な色に淀む
赤と緑の絵具を混ぜ合わせたような無彩色に
向ける視線は親へのものとは思えない。
かける言葉は子へのものとは思えない。
私の正面に立つ焦凍と、背面に経つエンデヴァーさん
交わす視線も言葉も
自分に向けられたワケでもないのに
流れ弾に当たったかのように痛い。
ゆたりと弛んでいた空気の糸はピンと張り詰めて…
キレた。