第19章 【琥珀色】訪問診療録(後編)
~Side轟~
どれ程のモンか知らねぇが
リカバリーガールの話から推測する限り
ハイリの名はヒーロー界じゃ割と知れてんだろう。
雄英が育てた次世代の“治癒の個性”
雄英の卒業生であるクソ親父が知っててもおかしくはねぇ。
興味がねぇのか、聞くまでもねぇのか
その両方もあり得るか…。
どれにしたって気味が悪ィ
ハイリを一人にしたくねぇ主な理由はこれだ。
出来ることならさっさと帰りてぇ
そう思って話を振ってはみたが
「なぁ、帰んなくて良いのか?」
「んー、実家で待ってる人が居る訳じゃないし、もう帰るって言ってもねぇ…。」
柱時計は22時を指している。
確かに今から県外へって時間じゃねぇか…。
仮に帰ると言われても
こんな時間にハイリ1人で夜道を歩かせるわけにもいかねぇし、
俺も帰ると言ったところでコイツが頷く訳ねぇし
(なんたって、俺をこの家に留めるために
泊まるとまで言ったんだからな、コイツ。)
幸い、どこまで肝が据わってんのか
初めて来たその日に泊まるってのに
ハイリに緊張はもう見当たらない。
姉さんが用意した浴衣を着ている所為か
寧ろくつろいでいるようにすら見える。
まるでこれが日常の風景かのような…
そう考えりゃ
実家にハイリが居るってのは
(それはそれで良い事だよな…。)
「物は考えよう」とはよく言ったモンだ。