第19章 【琥珀色】訪問診療録(後編)
~Side轟~
(やっぱ畳は落ち着く…。)
小突いた手を頭へ回しそれを枕に仰向けになる。
馴染んだ感触、イグサの匂い
頭はともかく身体が安心してんのがわかる。
ハイリの家はフローリングだからか
気付きゃ俺はいつもベッドの上だ。
あんな親父が居る家でも生まれ育った家
そういうモンなんだろう。
だがそれでも――
「後悔なんてしてないよ?」
小突かれた頭に手を当てながら
安心したような微笑を浮かべるハイリを見て思う。
(ハイリの家の方が良い。)
ハイリの傍の方が居心地がいい
亜麻色の髪を一房とって、改めてそう思った。
親父と言えば
違和感だらけだ。
夕飯中もひたすら質問攻め
それも全て俺に関してのモンだった。
授業はどうだ
鍛錬は欠かしていないか
担任は誰だ
テストは、成績は
エゴイストなアイツらしい質問は
俺が無視してばかりだったせいか
ついにはハイリに向けられる始末。
ご丁寧に全部答えるハイリもハイリだが
(それでも、ハイリへの質問は一つもなかった。)
初対面でいきなり「“個性”は?」ってのも失礼だが
食事の席で全く何も聞かないってのもおかしな話だ。
まるで、聞く必要はねぇ
そう思っているかのような…。
その割には泊まれと言ったり
飯を一緒に食いたがったり
(読めねぇ…。)