第19章 【琥珀色】訪問診療録(後編)
~Sideハイリ~
夕食は
焦凍が怖くて味なんてわからなかった…。
纏うオーラの色は重い鉛色
目つきは鋭いなんてレベルじゃない
少し席を立つだけでも付いてくるし
席を外す度連れていかれるし
多分、私を一人にしたくなかったんだろう。
まるで
我が子を守ろうとする野生の猫の様だった。
なのにエンデヴァーさんが部屋を出て行った途端
そのオーラが消えてしまうのだから…
私の方が付いて行けない。
(失敗だったのかな…。)
『親父を嫌悪する』と言っていた。
その理由も把握しているつもりだった。
嫌悪の意味もちゃんと知ってる。
(話は聞いてたし
理解していたつもりだったけど…。)
ここまでとは…。
父であるエンデヴァーさんは
そんな焦凍を特に気に留める様子も無く
ひたすら学校での事を質問攻め
お姉さんでさえ、私を気遣うくらいだった。
あれが…いつもの焦凍なのだろう。
どおりでウチに入り浸るはずだ。
「はぁ…。」
お茶を一口飲んでは溜息を零す。
泊まるだなんて、余計な事をしたのかも…
呟きそうになった言葉は
無理やりお茶で流し込んだ。
隣に焦凍が居るんだもん
言える訳がない。
なのに、まるで聞こえてしまったかのように
横から頭を小突かれた。
「後悔するくれぇなら
最初から帰っときゃよかったんだ。」
決して笑顔ではないけれど
ふて腐れたような、呆れたような
この顔ならよく見るものだ。
エンデヴァーさんが部屋から去っても
ご機嫌斜めなのは変わりなし。
それでもリラックスしているようにも見える
畳の上に胡坐をかいたまま後ろに寝そべってる焦凍なんて…貴重だ。
ウチでの焦凍の定位置はベッドの上だからね。
(やっぱ実家の方が落ち着くんだろうな。)
それだけでも
留まった意味はあったと思う。
泊まる価値はあると思う。