第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
~Sideハイリ~
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キッチンに響く声は歌を歌っているようだと
自分で思う。
「いっこ、にーこ、さんこ」
純白のケーキに花が咲く
並んだ薔薇から綺麗なものを選りすぐっては乗せていく。
白と赤
イチゴケーキなんて焦凍の為にある様なケーキだ。
一つ花が咲く度に落ちて来るキスに身を捩りながら
そんな事を思う。
首に回された腕は後ろから
どうやらデコレーションも気になってしょうがないみたいだ。
「シャワーを浴びたら少し休んでて」って言ったはずなのに、「見てる」と言って聞いてくれなかった。
だけどもう拗ねたりしない。
それは多分、
ずっと悩んでいたデコレーションが決まったから…だと思う。
迷うことなく脳は指示するのに
耳に触れる吐息がくすぐったくて
指がちゃんと集中してくれない。
数える口もどこか上の空だ。
「よんこ、ごーこ、ろっこー…なな――……」
危うく7つ目を乗せてしまう所だった。
慌てて食べた7個目に
今までキスを落としていた唇がやっと開く
「まだ花残ってんぞ?」
首に摺り寄せられた髪がくすぐったい。
8個目をつまんで肩口に差し出すと
パクリと指ごと食べられてしまった。
さっきの仕返しだろう…。
「ん、いいの。
6個並べる事にしたの。」
ギリギリまで悩んでた。
悩めるように、沢山作っておいた。
薔薇の個数が表す意味をメモにして
睨めっこした時間はどれ位だっただろう。
一つなんて選べっこない
欲張りな私は仮眠を取るまで悩んでいたけど
(6個に決定!)
甘すぎる時間を終えた今
迷う余地なんてない
そう思った。
「あなたに夢中」
それが、紛れもない事実だから。