第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
~Sideハイリ~
いつもならギュってしてくれるのにな。
触れられる感触も、どこかもどかしい
それ以上にこの距離がもどかしい
この、甘いバニラの香りの所為なのだろうか
脳が麻痺して感覚が鈍っているのだろうか
霞がかった頭で考えられるのはそれくらい
あとは頭を傾げる事くらいしか出来なかった。
「困った」と呟いた焦凍の顔は
あまり見た事無い表情を浮かべていて
その言葉は事実なのだと頭が遅れて理解する。
(どうしたら良いのかな…。)
覚束ない頭は
考えているようで考えていない
ただサラサラの前髪をかき上げて
指の隙間から零れた髪を目で追いながら
胸の中を占めている言葉を呟く。
「だいすき…だよ?」
瞬間
ふわふわとした心地が身体までをも浮かす。
焦凍の向こう側の景色は
天井の白から壁の白へ
抱き起こされた身体に力はまだ入っていないけれど
支えるように回された焦凍の腕に
安心して抱きついた。
ぬるりとした感触が触れ合った部分で滑り合う
「んー…?」
離れて確認しようと背を伸ばすけど
焦凍は肩を揺らしながら
それを拒むように抱きしめる腕に力を込める。
「ね、なんかヌルヌルする。」
「だな。」
お互いに肩に顔を埋めた状態では
どんな顔をしているのか見えないけれど
それでも、この肩の揺れは苦笑なのだろう。
「俺の負けだ。」
更に笑いながら囁かれた彼の言葉に
そう思った。