第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
~Side轟~
失敗した。
余ったクリームは
残すことなくハイリに使う事にした。
責任もって食えって言ったのも
俺が食べたいケーキを作りたかったと言ったのも
全部ハイリだ。
そこは問題ねぇ。
寧ろ一石二鳥だろ。
「いいよな?」
眠り姫の頬を撫でながら
帰って来るはずのない返事を待つ。
「ぅ…ん。」
タイミング良く上がった寝言に
躊躇う余地なんざなかった。
ハイリを覆う布を全て床に落とし
さっきやっていたように
パレットナイフとやらでクリームを塗っていく。
時々唸りながら
ふるふると抵抗を見せながら
それでも起きないハイリは
俺にしてみりゃ冷蔵庫の中で休んでいるあのケーキより
よっぽど旨そうだ。
(……なんて口にしたら
ハイリのヤツ、拗ねちまうんだろうがな。)
笑いながら乗せたクリームが、体温でじんわりと溶けていく
春の日に溶かされた雪のように山を滑り落ちては、その谷間で弾力を失っていく。
それを舌で掬い取り
滑り落ちた道を辿り
淡く色づいた頂を口に含むと
ピクリと肌が跳ねた。
「…んぅ…っ…。」
眠っていても尚可愛い
回数を重ねるごとに舌に伝う温度は上がっていく
自分の口についたクリームを親指で拭いながら
甘い声を漏らして
僅かに身悶えるハイリを眺めては満足する。
次第に俺は自分に縛りをかける事にした。
“自分にクリームは付けない事”
なんて事はねぇ。
自分についたクリームなんざ大して旨いとも思えねぇ
ただハイリだけを味わい尽くしたい
自己満足のゲームのつもりだった。
まだクリームのついていない内腿を撫で
そこに舌でクリームを乗せていく。
もう舐め取ってるのか
伸ばしてるのかさえ分からねぇ。
キッチンで味見した時より数段甘味を増したクリームは
もはやどっちの味なのか。
考えるまでもねぇ。
自分の指についているクリームをペロリと舐め
フッと笑う。
「ハイリだな。」
甘いのはハイリだからだ。