第3章 【桜色】恋愛性免疫不全
~Sideハイリ~
昨日と同じ速度で駆け抜けた学校までの一本道は
景色が全然違って見えた。
走る原因となった人は同じなのに
1日でまさかこんなに変わるなんて誰が予想できただろう。
考えれば考える程深みにはまっていきそうで、頭の中を空にするために教室までひた走った。
「昨日は保健室だったんだよね?
今日はだいじょぶ?」
初めて入った1-Cの教室は
思ってたより普通で拍子抜けするほどだ。
雄英だからと構え過ぎたのか、それとも普通科だからなのか
とりあえずこのクラスなら平和に過ごせそうだと一息つく。
一番に話しかけてくれた子はとてもいい子だし、なんとヒーロー試験の会場も一緒だったらしい。
他にも似たような子はチラホラいた。
(併願してた子って結構いるんだなぁ。)
自分と同じ子がいるというのは安心の一要素だ。
だって日本人だもん。
「だいじょぶ! クラスの輪に乗り損ねちゃったらどうしようかと思ったよー。」
「まだ二日目じゃん! 大袈裟すぎだしっ!」
徐々に一人、もう一人と輪は大きくなり
ガールズトークに花が咲く。
平穏な女子高生ライフの幕開け
油断しきっていたところにそれは突然やってきた。
「そう言えば昨日倒れたハイリちゃんを保健室に連れて行った人ってさ、彼氏?」
「へ!?」
口火を切ったのは一番に話しかけてくれたくくるちゃん。
だけど残りの二人も見逃してくれそうな雰囲気ではなかった。
「私丁度見たんだけどさ、すごいイケメン!
しかもお姫様抱っこ!」
「いいなぁ~うらやま~っ
ね、どうなの?」
「吐け、はけぇぇっ」
先ず倒れた訳じゃない
全否定したくとも出来ないこの現状。
音符をまき散らしながらの
恋バナなんて女子の特権だ。
きっと逆の立場なら私も同じこと言うと思う
それでも今の私には痛すぎる話題だった。
「残念ながら違うんだなー…これが。」
肩をすくめて苦笑い。
「うそだぁ~」なんて声が左右から上がるけど、ホントなんだからしょうがない。
「ホントホント!」と事実を認める度に
心にもやが広がっていった。