第3章 【桜色】恋愛性免疫不全
~Side轟~
今までまともな人付き合いが無かった俺にとって
コイツとの今の距離感に違和感なんざ一つもなかった。
居たい距離に居ればいい。
もちろん嫌がることはしたくない。
だからそれが嫌だと言われれば納得のしようもあるってのに
「ダメって言うか困るっ!」
こんなんばっかだ。
涙を溜めた目で恨めし気に見上げられても
可愛いとしか思えねぇし
いっそのことはっきり言って欲しい。
「嫌ではないんだな?」
腕を引けば軽く引き寄せられる。
この距離に居ると触りたくなる。
我慢できずに髪を撫でれば涙を溜めた瞳が一層揺れた。
「だからっ…」
か細い声は春の風にも掻っ攫われそうに思えた。
「あんまり近いと心臓が壊れそうになる…っ。
少し…加減して欲しい。」
真っ赤な顔でチラと見上げすぐ睫毛を伏せる。
その顔に見惚れているうちに
ハイリは俺の腕を解いて学校へと走り去って行った。
「は……」
加減しろって?
あんな顔見せておきながらよく言う。
お前の方がよっぽど心臓に悪い。
「こっちの台詞だ…。」
柄にもなくその場にしゃがみこんで肩で笑う。
きっと今の俺の顔は
さっきのハイリより真っ赤だ。