第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
~Sideハイリ~
「眠そうだな、少し寝ろ。」
これだけ遠慮なく欠伸をしていれば
そう言いたくもなるだろう。
焦凍はこれで結構世話焼きなのだ。
出来れば起きていたいのに
頭を撫でられると
余計に眠たくなってくる。
スポンジケーキを作るために
今日は張り切って早起きし過ぎた。
室温の低いキッチンから暖房の効いた部屋へ移動した事と
ケーキを作り終えた達成感で、私の頭は思い出したかのように酸素を欲しがっているようだ。
欠伸が止まらない。
「うーん…。」
起きていたい。
たけどこれじゃ夜までもたない。
夕食まで時間もあるし
今日はちゃんとお祝いしたい。
何よりベッドまで連れていかれてしまっては
もう寝るしかないだろう。
「じゃ、さんじゅっぷん…で、おきるー…。」
指を3本立てたその手が
パタリとベッドマットに落ちる。
自分の背がマットレスに沈んだ途端、もう瞼も開かない
感じるのは髪を撫でられている感覚だけ。
(あ、生クリーム冷蔵庫に入れなきゃ…)
気がかりがふわりと浮かび上がっても
口にする事は叶わず、
まぁ冬だし大丈夫か…
そこに留まってしまった。
「30分な、わかった。」
優しく滑る指が頬に触れて柔らかな温もりが瞼に落ちる。
まどろむ意識でも条件反射のように笑いながら
この上ない安心に包まれて
私は夢の中へと吸い込まれていった。