第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
~Sideハイリ~
「器用だな、ケーキ作ってるとこ初めて見た。」
見なくても良かったのに
ちょっとはびっくりさせたかったのに
小さな不満は今日くらい飲み込もう。
(誕生日だもんね…
あ、でも……)
これだけは言うべきだろう。
キッチン台の上、ボウルの中
大量に余ってしまった生クリームをスプーンで掬って
焦凍の口に無理やり突っ込む。
「ほらー、余ったでしょ?
責任もって約束通り食べるんだよ?」
「多いに越したことはねぇと思ったんだがな…。」
必要ないって散々言ったのに
「作りたい」と言ってきかなかった生クリームはパック丸々1個分。
私が作った分も余っているから
1パック以上余ってる事になる。
お陰様で
夜食用に作ろうと思っていたキッシュはおあずけだ。
ただやりたかっただけだと思う。
ケーキを作るのは初めてだと言ってたし
ハンドミキサーじゃなくて
わざわざ泡立て器を使ってたくらいだし。
やった事無いなら
やりたくもなる……よね?
(珍しく困った顔してる…。)
突っ込まれたスプーンを加えたまま
複雑な顔で生クリームと睨めっこしても減るワケないのに
焦凍はまじまじとクリームを見つめている。
『多いに越したことねぇだろ。』
これで今後はあんな事言わなくなるだろう。
わかってくれればそれでいい。
止まらない欠伸を片手で覆い
滲んだ涙を指で拭う
ふわふわしてる頭でもこんなことを考えてしまう。
なんだか私…お母さんみたいだ、と。