第18章 ♦番外編♦ 紅白中毒症
~Sideハイリ~
朝焼いておいたスポンジに生クリームを着せる。
絞り器は星口金からローズ口金に変えて
縁取りにふわりと舞うスカートのようなドレープを。
カラースプレー・アラザン・ミントの葉
純白のケーキを飾るアクセサリーなら色々あるけれど
今日食べるケーキならばこれ一択だろう。
ヘタを取ったイチゴを半分に切って薄くスライスし
斜めにずらしてクルクル巻けば、イチゴの薔薇の完成だ。
「よしっ! 出来たっ!」
飾るのは水気が抜けてから
冷やしたバットにキッチンペーパーを敷いて
イチゴ製の薔薇を並べていく。
ラップをかけて
うんうん、と一人頷いては緩む頬に両手を添える。
もう殆ど自己満足だ。
(飾り付けが楽しみだ…。)
ケーキ作りの一番の楽しみと言ったらこれでしょう。
ほぅ、と満足のため息を吐き出すと
クスリと笑う吐息にハタと現実に戻された。
そうだ、一人ではなかった。
今日の主役は
ケーキなんて目もくれず
こっちがとろけちゃいそうな笑顔を私に向ける。
「お前の方が嬉しそうだな。」
甘い視線。
余ったイチゴにクリームを乗せて
私の前へと差し出してくる。
あーんしろと、言いたいのだろう。
(食べるけどね、遠慮なく。)
指ごと加えてイチゴだけを奪い取る。
これでも少し拗ねているのだ。
サプライズなんか出来っこない
とは思っていたけど
作る過程をここまでガン見されるとは思ってなかった。
純白のケーキとイチゴの薔薇が乗ったバットを冷蔵庫に仕舞いながら、苦笑いで欠伸を噛み殺す。
頃は新春
冬休みも開けたばかりの1月11日
皆にとっては何でもない平日かもしれないけれど
私にとっては一年で一番特別な日
今日は焦凍の誕生日だ。