第3章 【桜色】恋愛性免疫不全
~Side轟~
出会いからして変わってるやつだとは思っていたが
朝からハイリがおかしい。
「なぁ、俺なんかしたか?」
「んーん、何も。」
返事も笑顔も確かに普通だ。
だが気に入らないのはこの不自然なまでの距離。
左後方を振り返ればビクッと肩を揺らして
足を止めるハイリと目が合った。
「せめて前を歩いてくんねぇか?」
「いや、轟くんコンパス長いしすぐ追いつかれちゃいそうでさ。」
距離で言えば5mはあるだろう。
何度尋ねても未だ納得のいく返事は貰えない。
態度は明らか、隠す気配もねぇ
いくら思い起こせど原因が見当たらねぇ。
(風呂…まではわりと普通だったよな。)
入れ替わりでそそくさと入った時は気付かなかったが
出てからは明らかに距離を取られている。
出来れば無理強いなんかしたくない。
そう思っていてもこれじゃ埒が明かねぇ。
結局は
逃げられない様に捕まえて尋ねるしかねぇんだ。
一歩踏み出せば身を縮めて警戒される。
なのに逃げる気配は見当たらねぇ。
腕を掴めば泣きそうな顔で見上げてきた。
(嫌なら逃げればいい、逃げないお前が悪い。)
どうやら自分で思っていた以上に俺は気が短いらしい。
「ハイリは一緒に居るのが嫌なのか?」
「そゆんじゃなくて、あの、近い…。」
「近いとダメなのか?」