第17章 【琥珀色】訪問診療録(前編)
~Sideハイリ~
あれから
ご飯は可愛らしい外観のカフェで取ることにした。
勿論私のチョイスだ
パンケーキがあまりにも美味しそうだったからってだけ。
互いの実家について色々話しながらちょっと遅めの昼食のつもりだった。
『日本家屋?
すごいね、鹿威しとかありそう。』
『お前の基準はいつもわからねぇな。
お前ンとこは?』
『んー…おもちゃのような家だね。』
『……………おもちゃ?』
何気にこんな話題は初めてだったから
ちょっと夢中になりすぎたのかもしれない。
気付いたら夕方になってて
周りに座ってた客層もガラリと変わってて
慌ててお店を出たんだ。
ここまではなんの問題も無かったはず。
それから――…
そうだ、電話がかかってきたんだ。
~~~~♪
焦凍のスマホが鳴るなんて滅多にない。
だから余程の事かと思って少し離れてた。
この時に帰ればよかったんだろうけど
流石に何も言わずに帰る訳にも行かないし
というか、そんなことしたら絶対怒られてしまう。
(待とう。)
今思えば、
ここが今日の2個目の分岐点だったんだ…。
『ハイリ、相談がある。』
電話を切った途端
珍しく神妙な面持ちで何を言い出すかと思えば
お姉さんがどうも勘違いをしているらしいとの事。
何をって…
『なんかお前が来るもんだと思い込んでた。
あまりにも楽しそうなんで否定できなかった。』
『えぇぇぇ……。』
『わりィ…。』
確かに話したことすらなかったし
大事な弟さんを家出させてる訳だし
挨拶くらいはすべきだろう
何より、焦凍からお詫びが来た時点で
もう選択肢はあっても答えは決まっている様なものだった。
(ちょっとだけなら。)
最期の分岐点。
ちょっとお邪魔してご挨拶して
すぐに帰るつもりだった。
なのに向かう途中、タイミングの悪いことに夕立に降られてしまってちょっと所じゃなくなった。
濡れていたのは事実だけど
問題なく外を歩ける程度だったとは思う。
なのにあれよあれよと二人がかりで言い包められて、お風呂を借りる事に…
私は思った、
一見真逆の性格のように見えるけど
やっぱり姉弟って似るんだ…と。