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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第17章 【琥珀色】訪問診療録(前編)


~Sideハイリ~


『ちょっとだけ』

この言葉ほど危険なものはないと思う。

それは己が定めていた境界線を曖昧にし
甘い、楽な方へと誘っていく
気付いた時にはちょっとどころじゃなくなっている。
そんな誘惑の呪文のような言葉。

そして必ず思うんだ
こんな筈じゃなかったのに…って

今の私は、まさにそれだと言えるだろう。










「ハイリちゃん、着替えここに置いておくね?」

「すみません、ありがとうございます…。」







……何故、こうなったのだろう?


温かい湯に身を浸しながら


(いつかの日も似たような事を考えた気がする。)


などと
一人感慨にふけっていた。


(いつだったかな…?)


そんな考えは現実逃避に過ぎない
現実を見ろ、私。
ここは浴室で
更に言うなら轟亭の浴室だ。

ふやけかけた両手て顔を覆うと
パシャリと音をたてて湯が跳ねる。

いい加減に出ないと
とは思ってもどんな顔してお詫びをすれば良いのかわからない。
顔を合わせづらい。


「姉さん、あまり構わないでやってくれ。
多分、出るに出れねぇだけだと思う。」

「そうなの?
気にしないで良いからね~。」

「いえ、本当にすみません…。」


項垂れながらのドア越しの会話。

どうしてこんな醜態を晒す羽目になってしまったのか
お湯の中に顔を半分までつけて
私は今日一日の記憶を手繰り寄せていた。





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