第17章 【琥珀色】訪問診療録(前編)
~Side轟~
勘違いしたまま仲良くなる分には構わない。
頭ン中では整理できても
視覚的に悪けりゃ精神的にも悪い。
事実、爆豪は俺に対して常に挑発的だ。
なのに俺がそれに乗ろうとすればハイリが全力で阻止にやって来る。
どうも本気で俺を爆豪に取られまいとしてるらしい。
無駄に必死なその様は新しいペットに主人を取られまいとしてる…あれみてぇだ。
(俺も自分が普通だとは思ってねぇが
コイツも大概だ。)
勿論可愛い、
だがストレスじゃねぇかどうかは別の話だ。
これでも結構、我慢してんだ
行き場のないストレスは帰ってから晴らす
休日使ってやっと±0ってとこだろう。
なのに帰れ…と
納得いくわけがねぇ。
散々拒否した結果、
口論になった。
口論っつってもハイリが訴えてくるばかりだったが
あまりに素っ気なくし過ぎたせいか、段々と萎れ始めて…
『いい加減な子って焦凍のご家族には思われたくないよ…。
これでも本気なんだよ?』
なんて涙声で可愛いコト言い始めたモンだから
つい、頷いちまった…。
(そうか
あれにやられたのか俺は…。)
可愛いハイリ
結局俺はコイツに敵わねぇんだ。
気付いたら不満も消え失せる
だがその分、離れがたさは一層増す。
親父に会うかもだけじゃねぇ
ハイリと丸一日会わねえってのが初めてで
心底落ち着かねぇ…。
額に手を当てて溜め息をつくと
ハイリはそんな俺を見て
「悩まし気だね…。」
それだけ言って
顔を窓側へと背けた。