第16章 【琥珀色】CT knock
~Side爆豪~
午後の授業、ハイリの姿はどこにもなかった。
別に珍しいことでもねぇ、アイツは普通科の人間だ。
担任だかの学校だかの事情で、2クラスをかけ持ってやがる。
それが大変な事なのか
楽な事なのか
いつも笑ってるハイリからじゃ何もわからねぇ
それが俺とアイツの今の距離だ。
そんなことすら苛立ちの原因になっちまう。
「な、悪い事いわねぇからハイリちゃんは諦めろって。な?」
アイス奢ってやるからと
両側から肩を組んでくんのは切島と上鳴だ。
つかなんでアイスなんだ?
あんな甘ったるいもん食ってられっか!
何度払ってもしつこく絡みついてくる腕を
負けじと振り払う。
「ルセェ黙れアホ面、てか惚れてねぇ。」
「さっき『奪ってやる』って、はっきり言ってたじゃんよ。巨悪な面でよ。」
さっきからずっとこれだ
「無駄だ」
「諦めろ」
「見込みねー」
終いには「お前の為だ」と
両側から遠慮なくほざきやがる。
大体テメェらだって昨日まで天使だなんだと騒いでたじゃねぇか、アホか! クソか!
とはいえ、んなこたァ嫌って程わかってる。
俺自身が痛いほどだ。
「爆豪、落ち着いて聞けよ?
いいか? ハイリちゃんはな―……」
「るせークソ髪。」
切島の言葉を遮って
意識を宙に飛ばす。
思い出すのは昼休み
最期に見たハイリの顔。
頬を染めて
表情を蕩けさせた、だらしのねぇあのマヌケ面。
あれを見たのは初めてじゃねぇ。
なんせアイツはいつも俺の視界に入ってきやがるから
勝手に入ってきやがるから
俺は嫌でも気付いちまったんだ。
あの面でハイリが誰を見ていたのか。
既に付き合ってた
そこには一瞬面食らっちまったが
俺にとっちゃ大して変わりはねぇんだ。