第16章 【琥珀色】CT knock
~Side爆豪~
「わかってくれればいい。」
詫びるハイリの頬を撫で
味わうように
見せつけるように
轟がハイリの肌を食んでいく。
始めこそ抵抗を見せていたハイリも
なされるがまま、轟を受け入れるように力を抜いたのがわかった。
教室に居た奴らも
昼食を終えて戻ってきた奴らも
この光景に瞠目し、その場から動きもしねぇ
俺自身
今すぐに引き剥がしてやりたい衝動に駆られたが
この状況、足が動かねぇ程度には動揺していたんだ。
温度もねぇ、表情も感情もねぇ
いつも何考えてんのかわかんねぇ
そう思っていた奴が初めて見せた感情。
痙攣したように引きつっていた頬が
別の理由で吊り上がる。
それに気付いた轟は
ハイリから顔を離し
いつも淡々とした表情に感情を乗せ
それを初めて俺へと向けた。
「ワリィが―…」
細められた目に浮かんだのは
殺気にも似た威嚇。
極寒の海に身を投げ入れられたように
全身にピリピリと鋭い痛みが差したようだった。
それだけで、どれだけこの野郎がハイリに執着してんのか垣間見える。
ぞくりと粟立った原因は悪寒か高揚か。
「…―てめェが入り込む隙なんざ1ミリだってねぇよ。」
「ハッ! そうかよ…。」
目つきはそのままに
俺だけに見せつけるようにハイリの頬にキスを落とす。
ハイリは紅潮した顔を跳ね上げた後、
それを周りに悟られたくねぇのか、顔を俯かせた。
(気に入らねぇ…。
またこの顔かよ、クソが。)
いつもだ
いつもこの顔の所為で
イマイチ一歩を踏み出せねぇ。
今はまだあっちに分がありすぎる。
それでも今までと状況が
ガラリと変わったことに違いはねぇ。
「奪ってやんよ。」
「無理だ。」
本来、こうあるべきだったんだ。
朝のがおかしかっただけだ。
宣戦布告
ブッ倒すべき相手がようやく俺を視界に止めた瞬間
全身の血が湧き上がった。