第16章 【琥珀色】CT knock
~Sideハイリ~
大きく見開いた瞳で瞬きを二回
自分の身に何が起こったのか
それが理解するまでに出来た唯一の事。
瞼以外、どこも動かなかった。
(―――――え?)
シン…と静まり返った教室内には
勿論クラスメイトが普通に居るはずだ
何か言いたげに追ってきた爆豪くんは
すぐそこ居る
なのに
まるで放課後の教室に取り残されたように静かな空間だった。
だけど
昼休み中であることに変わりはない。
扉の向こう側―廊下の騒めきが私に現実を告げる。
皆より幾分遅れて理解が来た私は
慌てて頭を引くけれど
「んんっ」
離れるのを惜しむように
もう一度口を塞がれて、言葉を発する機会を失ってしまった。
唇を甘噛みしては離し、舐め上げては離し
何か言おうとしようものなら遠慮なく塞いでくる。
目の前の問題に忘れそうになるけれど
ここは教室だ
恥ずかしいやら息は上がるやら
酸欠状態の頭に視界もぼやけて来る。
(二人きりの時だって
こんなに長いキスはしないのに…)
やっぱり怒っているのだろう。
その割に
間近にあるオッドアイと目を合わせると
その双眼は艶やかに弧を描く。
意地悪を楽しんでいる時の顔だ。
良くない予感がして
胸を押し返してはみたけれど
私が焦凍に敵うはずもない。
いつも所かまわずキスしてくる人だ。
人が居ようが居まいが気にしない人だ。
だけどここは
ここではダメでしょう…?
「待っ…んっ」
不自然な静けさに私の呻きと儚い水音だけが落ちていく
意識を必死に繋ぎ止めながら
どうするべきか拙い頭を回していた。