第16章 【琥珀色】CT knock
~Side爆豪~
白く、細い首筋に歯を立てた
吸血鬼が美女の生き血をすするように。
俺に牙があんなら本当にそれくらいやったかもしれねぇ
とうに他の男のモンになっちまったハイリは
大きく肩を跳ねさせて
痛みから逃げるように顔を逸らし
俺の腕を押し返す。
拒むように顎にキュッと力を込めると
力が緩む代わりに震えが布越しに伝わって来た。
(ホントに血でも出りゃ
吸い尽してやんのにな。)
初めて会った時は恐怖すらした。
得体の知れねぇ人種だったからだ。
ぐるりと囲っていた俺の壁。
一分の隙も無く張り巡らせていたそれを軽々と飛び越えて
あっさり俺の頭ン中に入ってきやがった。
それからずっと断りもなく棲みついてやがる。
落ち着きないように見えてどこか冷静
馬鹿のように振る舞っちゃいるが言動の端々に配慮が見える。
初めてだ
初めて欲しいと思った。
簡単に諦められるワケねェだろ。
「ばくご…くん…っ」
「ん」
震える声にこっちの脳まで揺れる。
首から口を離して見れど
当然ながら血は出てなかった。
されど俺の歯に沿って滲んだ赤が
白い肌にはっきりと残っていて、
今はそれで十分だと、まるで血を舐め取るように舌を這わす。
「暴力…反対…っ」
「暴力じゃねぇ。」
青ざめて、震えながら
掠れた声で抵抗しようが
そんなモン逆に煽られるだけだ。
いっそこの口を塞ぐかと顎に手を掛けた瞬間、
後ろ首を掴まれ
勢いよくハイリから引き剥がされた。
「コイツに触んじゃねぇ。」
振り返らずともわかる
癪に障る声だ。