第15章 【琥珀色】MRI knock
~Sideハイリ~
朝の一件を経て、
私の高校生ライフは体力トレーニングへと変貌を遂げた。
穏やかな日常はもう諦めていたけれど
これはー…いくらなんでもあんまりだ。
「待ちやがれっっ!」
「無理ーーーっ!!!」
休み時間がやって来る度に追いかけっこ
勿論、鬼は常に爆豪くんだ。
本当に鬼の形相で追ってくるんだもん
こっちだって必至にもなるさ。
(そう言えば、小さい頃もやってたな…
あの頃とは比べ物にならないけれど。)
比べるとかそんなレベルじゃない。
そんな可愛いものじゃない。
長い廊下をひた走る、のんびり歩く生徒の間を縫って階段を駆け上がりまた走る。
不思議そうに振り返る同級生も先輩方も
昼休みには
もう気にならなくなってきた。
これを毎時間、毎日繰り返したら
間違いなく身体能力も体力も上がるだろう。
絶対きついけど。
「暴力反対っ!!」
「手ぇ出してねぇだろうがッッ!!」
「そうだけどっ怖いんだってば!!」
先生とすれ違い様に怒鳴られ、「ごめんなさいっ」と叫びながら走っては階段を降り…
また廊下を走って1-Aの前を横切って――
これの繰り返し。
チャイムと共に始まる所為で
ご飯も食べてなければ、トイレにも行ってない。
真向勝負を受けたからには
爆豪くんの性格上、焦凍に直接向かっていくと踏んでいたけど、どうやら私の計算ミスだったようだ。
まさか私を潰しに掛かって来るとは…
(そうだ、この人…意外に冷静な人だった。)
理に適っている上、確実だ。
お陰で今日はまだ、焦凍と話せてない。
これじゃ爆豪くんの思うつぼじゃないか。
【飯田と緑谷から一応聞いた】
絵文字もスタンプもない焦凍らしいLINE。
いつもの事だけど、飾り気がないその12文字に今日は怒りすら感じた。
私の後ろめたさがそう感じさせているのだろう…。
忌々しき事態だ。
早めに話したい、そうは思っても…
「テメ…足、早えな。」
「はぁっ…簡単に捕まえておいて、よく…言う。」
まず、この恋敵をなんとかしなければ
話すどころか顔を合わせることすら叶わなそうだ。