第15章 【琥珀色】MRI knock
~Sideハイリ~
捕まれた手首を壁に推し当てられて
よろけた身体は、同じ壁に支えられた。
肩を掴まれ押し当てられたのは壁なのに
地に抑えつけられた様な気さえする。
いつか見た写真を思い出す。
大きなライオンに押さえつけられたシマウマの写真。
弱肉強食
サバンナを生きる草食動物の末路と言えば
その殆どが捕食されて終わると言うものだ。
焦凍とはまた違う余裕の笑みは
好戦的と言う言葉が良く似合う。
緋色の双眼がギラリと光り
「お遊びはもう終わりだ」と言われているようだ。
朝の宣戦布告の時は
むしろ私の方が有利だとすら思っていたのに
こんな顔をされては、有利どころか対等…
いや、もはや格下にすら思えてくる。
「待って!
暴力は駄目だからね!?」
「わあってる。」
目一杯睨み上げて威嚇すると
爆豪くんは気にも留めないどころか
軽くあしらい、ふつりと好戦的な表情を消す。
そして私をしげしげと見下ろした。
(怒っては無いみたいだ。)
ああも怒っていては、まともに話す事も出来ない。
話したところで諦めてくれるかわからないけれど
焦凍じゃなく私の方へ来たからには、
何かしらの方法で
私に諦めるよう説得するしか方法は無いハズだ。
とりあえずホッと息をつく。
(それにしたって……。)
改めて見てみると、この人もまた整った顔立ちだ。
いつも何かしらキレてるから気付かなかったけど…
(レアなものを見たのかも…。)
焦凍とは真逆だ
あの人はいつも真顔だもんね。
そのレアな表情にまじまじと見入っていると
伸びて来た指に頬をフニと抓まれ…
「お前なんか…旨そうだな。」
真顔でだ、
あの爆豪くんが真顔でそう言った。