第15章 【琥珀色】MRI knock
耳郎は後悔していた。
「真向勝負だ!」
爆豪と話せばハイリの誤解も解けるだろう。
ハイリを止められなかった負い目を払拭すべく、二人の間に割って入ろうとする上鳴を無言で止めた、その行動をだ。
(上鳴を止めなきゃよかった。
んなことより、早々にツッコむべきだった…。)
行動し損ねた事を後悔し
選択を間違えた自分を責めながらも
どうしても解せない。
どうしてこうもうまく行かないのか。
これは逆に、うまく行ってしまったと言うべきなのか。
日本語とはなんとも恐ろしい
主語無くして成り立ってしまった会話は
道を違えたまま始まり、そのまま綺麗さっぱり纏まってしまった。
ハイリの頭の中を知らないクラスメイトは皆、その目を見開きピクリとも動かない。
きっと皆と爆豪の頭の中は同じなのだろう。
(あーもう耐えられないっ!)
いまだ抑え込んだままの上鳴の首を掴み、そっと顔を近付ける。
「おい!?」と頓狂な声があがったが、知ったことかと
事実を告げる。
ひとり、またひとりと耳を傾けるものは増えていき
そこに小さな円陣が出来上がる。
始めこそ首を傾げながら聞いていた皆だったが
耳郎の言葉の文字数が増えるごとに表情を緩めていき
全て説明し終えた頃には、皆の感想を代弁するかのように上鳴がぷっと吹きだした。
「笑い事じゃないっての!
アンタなんとかしなよ!」
「無理だろっ! 爆豪になんて言えってんだよ!
死ぬわ! 俺がっ!!」
「大丈夫だって、馬鹿は死なないからサ。」
勿論小声での会話だ。
朝の教室、登校してくるクラスメイトが着々と揃っていく。
その真実は伝言ゲームのように、クラスメイトに広まっていく。
「上等だ、奪ってやらァ…」
爆豪のこの一言で、戦いの火蓋は切って落とされた。
……ただ一つ問題なのは
爆豪の相手が今一つはっきりしない事だ。
「で、爆豪くんVS…誰なんかな?」
「轟くんじゃないかな…たぶん。」
麗日の言葉に緑谷が苦笑する。
耳郎の説明を理解したクラスメイトは
皆それに乗っかるように頷く。
一先ず、ハイリの勘違いは知らなかった事にしよう。
頷いた頭の中は皆同じ思いだった。