第15章 【琥珀色】MRI knock
~Sideハイリ~
心のどこかにあった水溜り
「もしかしたら私の勘違いかもしれない」そんな願いは、彼の爆破のような一言で蒸気と化した。
「コラテメェ…何勝手に付き合ってやがんだ、あァ!?」
確信したのはつい先ほどの事
それでも衝撃だった。
本人の口から出た言葉は「抜け駆けするな」と言われているようで、淡い期待を抱いていた心が頽れる。
とは言え、引く事も出来ない我儘な自分もしっかりいるから困ったものだ。
誰が誰を好きになろうがそれは自由。
それは私にも言える事だし、爆豪くんにだって言える事。
「実は付き合ってました」という現状は爆豪くんにとって理不尽だろうが、この状況は私にとって理不尽だ。
だからこそだ
反論が口を衝いて出た。
「な…んで爆豪くんの許可が居るの!?」
「ったりめーだろーが! フェアじゃねぇっ!!」
「…………フェア、って」
なんと。
ここに来てフェアネスを貫こうと……!
悔しいけれどまっとうな意見に
返す予定だった言葉を喉を鳴らして飲み込んだ。
何だかんだとこの人は
端々にヒーロー魂をチラつかせて来る。
これだけの悪態も、この一言が加わると途端に立ち位置が変わるもので
(確かに、私が卑怯なのかもしれない。)
そう思えてしまう。
焦凍の優しさに甘えて付き合ってる事を伏せておきながら、バレたら開き直るなんて確かにいただけない。
せっかく「認めてやる」って言ってくれたのに
これではあの一戦も無駄になってしまう…。
(どうしよう…。)
焦凍がこの場に居れば少しは収める方法もありそうだけど、何故だか今日に限って遅い…気がする。