第15章 【琥珀色】MRI knock
~Sideハイリ~
何秒の間を空けてしまったのだろうか
ハタと我に返って口にしたのは、率直な疑問だった。
「え!? なんで…っ!?」
なんで上鳴くんまで知ってるの!?
この後なんて返せばいいの!?
もしかしてみんな知ってるの!?
問いの返しとしては、私にしては上出来だ。
否定はできなかったけど肯定もしてない。
頭だけじゃない心臓もパンクしてしまいそうな私は
もはや何が失言かわからなくなっていた。
自分のコントロールに手一杯で、焦凍へのお詫びも浮かばない。
湯気が出そうな頭を押さえて上鳴くんを見上げると、その青白い顔には何の表情も無かった。
(うまく、誤魔化せた…?)
一瞬空いた間に期待を込める。
しかし、そう都合よく行くものでは無い。
元々合っていた訳でもない虚ろな目が
それでも逸らすかのようにチラと横に逸れる。
へっ…と力無く笑ったかと思うと
「あー……」
気まずそうに口を開きかけた上鳴くん。
何か言おうとしていたけれど
後ろから押し退けられて、すぐに視界の外へと出てしまう。
交代して私の目の前に立ちはだかったのは
問題の彼…だ。
「コラテメェ…何勝手に付き合ってやがんだ、あァ!?」
吊り上がった目は90度に
気のせいか髪もいつもよりツンツンして見える。
両手の平で爆発を起こしながら迫るその様はまさに…対敵した猛獣にしか見えない。
これはもう、背を見せたら喰われてしまう
サバンナで生き抜く動物たちの気持ちが…なんだかわかった気がした。